研究計画

研究の背景および目的

 人口の高齢化や高血圧、糖尿病、脂質異常症など生活習慣病や虚血性心疾患の増加、さらに急性冠症候群に対する急性期治療成績の向上と普及に伴い、心不全患者が増加しています。今後ますます心不全患者は増加すると予想されており、わが国の疫学研究では、2030年には心不全患者が130万人を超えると予測されています。慢性心不全患者の多くは増悪による再入院を繰り返すため、医療上のみならず医療経済上の課題としてとらえられています。このような傾向は、わが国を含む先進国ばかりでなく世界各国で懸念されており、「心不全パンデミック」として、その対策は喫緊の課題となっています。その対策としては、高精度な心不全発症・重症化予測の実現と、効果的かつ効率的な予防・治療法の開発・確立・普及が不可欠であると考えられます。
 本研究の目的は、慢性心不全患者を対象に最近の知見や治療内容を反映した新たなデータベースを構築し、臨床情報やバイオマーカを用いた心不全発症・重症化の新たな予測指標・リスク層別化法を開発するとともに、その有効性を検証するものです。わが国における高精度な心不全発症・重症化予測法を開発するとともに、その有用性を検証し、それを活用した最適な効果的かつ効率的な治療戦略を見出し、心不全医療の質の向上を目指します。

研究の方法

研究デザイン

多施設共同前向きコホート研究(日本心不全学会の後援)

研究対象者

適格基準
  1. プライマリの診断が心不全であり、心不全急性期治療を要した患者
  2. 心不全の診断は日本循環器学会ガイドライン(2011年改訂版・急性心不全ガイドライン)上のフラミンガム診断基準に準拠し、加えてBNP≥100 pg/ml or NT-proBNP≥300pg/mLを満たす
  3. 年齢20歳以上の患者
  4. 同意が得られた患者
除外患者
  1. 心移植後の患者
  2. 緊急血行再建を要する急性冠症候群の患者
  3. その他研究者が研究対象者として適切でないと判断した患者

目標症例数

5000 例

研究実施期間

登録期間各施設での倫理委員会承認日〜2021年4月30日
(5,000症例収集された場合は早期に終了する)
選択基準2020年4月〜2023年9月30日
(最終症例の2年後の予後調査終了まで)
研究期間IRB承認日〜2024年3月

JROADHF-NEXT研究の流れ

下記の方法で情報収集を行います。

  • 事務局で行う内容
  • 研究参加施設の先生方に実施いただく内容
1. 全国の循環器診療施に本研究への参加を公募
2. 参加同意施設において研究計画書を倫理委員会に申請
(研究計画書の作成は事務局でサポートいたします)
3. 2019年4月より心不全で入院した患者に同意取得
4. 患者基本情報を各施設にてEDCに登録
5. 1年後、2年後の予後調査データをEDCに登録
6. 2019年の入院に関するDPCデータを各施設で抽出し、事務局へ提出
7. 4〜6のデータを事務局で集約・解析

入力項目

EDCへ登録する情報

  • 施設名
  • 施設年間症例
  • 施設地域
  • 記入者
  • 記入日
  • DPC番号(患者IDとして使用)
  • 心不全患者としての適格性の判定(適格、不適格)
  • 入院日
  • 生年月
  • 性別
  • 身長
  • 体重(入院時/退院時)
  • 社会的因子:独居、同居、施設入所
患者背景
  • 心不全入院歴:なし、あり
  • 基礎心疾患:虚血、心筋症、高血圧,弁膜症、先天性心疾患、その他
  • 併存症・合併症:高血圧、糖尿病、冠動脈疾患、心房細動、心房粗動、心室頻拍、心室細動、脳卒中、PAD、CKD、貧血、COPD、喫煙
  • 治療歴(入院前):PCI、CABG、ペースメーカー、ICD、CRT-P、CRT-D、CPAP、ASV、弁手術
入院後
  • バイタル:血圧、脈拍数
  • 身体所見:発作性夜間呼吸困難、起座呼吸、3音、ラ音、頚静脈怒張、末梢浮腫、四肢冷感
  • 重症度:NYHA分類 Nohria分類
  • 臨床検査データ:リンパ球数、ヘモグロビン、クレアチニン、ナトリウム、アルブミン、総ビリルビン、尿酸、BNP or NT-ProBNP
  • 画像データ:心電図(実施、未実施)胸部X線(実施、未実施)心エコー(実施、未実施)実施の場合(左室拡張末期径、左室収縮末期径、左室駆出率、心室中隔壁厚、左室後壁壁厚、弁病変、弁手術後、左室流入血流速波形(E/A)、僧帽弁輪部拡張早期波(E’)、左房容積係数(LAVI)、三尖弁逆流最大血流速(TRV))(HFrEF、HFmrEF、HFpEF)
  • QOL:KCCQ、EQ-5D-5L、DS-14、Mini-Cog
  • うつ:PHQ-9
退院時
  • 重症度:NYHA分類
  • フレイル(J-CHS):体重減少量、握力、疲労、歩行速度、活動度
  • サルコペニア:握力、歩行速度
  • 社会的因子:独居、同居、生活保護の有無
  • 臨床検査データ:リンパ球数、ヘモグロビン、クレアチニン、ナトリウム、アルブミン、総ビリルビン、尿酸、BNP or NT-ProBNP
退院後
  • 退院日(死亡日)
  • 脱落・中止(同意取り消しなど) なし、あり、死亡 なし、あり、死亡日
  • 死因(心臓死、血管死、非心血管死、不明)心臓死・血管死の場合(突然死、非突然死)、心臓死の死因(心筋梗塞、心不全、不整脈、不明)、血管死の死因(脳梗塞、脳出血、全身性出血、全身性動脈塞栓症、肺塞栓症、その他)、非心血管死の死因(肺炎、多臓器不全、その他)、血栓塞栓イベント、出血性イベント
 ・再入院

※上記ワークシートのダウンロードには参加施設用のログインが必要です。

DPCデータから取得する情報

  • 居住地郵便番号
  • 入院中検査:
    運動負荷試験(心肺運動負荷試験除く)(実施、未実施)心肺運動負荷試験(実施、未実施)心臓CT(実施、未実施)心臓MRI(実施、未実施)冠動脈造影(実施、未実施)心筋生検(実施、未実施)
  • 入院中治療:
    静脈注射(実施、未実施)利尿薬(実施、未実施)カルペリチド(実施、未実施)硝酸薬(実施、未実施)ニコランジル(実施、未実施)強心薬(実施、未実施)ドブタミン(実施、未実施)ドパミン(実施、未実施)ノルエピネフリンPDE3阻害薬(実施、未実施)ジゴキシン(実施、未実施)Ca拮抗薬(実施、未実施)冠動脈インターベンション(PCI)(実施、未実施)冠動脈バイパス術(CABG)(実施、未実施)アブレーション(心房、心室、房室結節、未実施)心臓再同期療法(CRT/CRT-D)(実施、未実施)植え込み型除細動器(ICD)(実施、未実施)患者教育(実施、未実施)心臓リハビリ(実施、未実施)IABP/PCPS(実施、未実施)補助人工心臓(VAD)(実施、未実施)心臓移植(実施、未実施)SGカテ―テル検査(実施、未実施)気管内送管(実施、未実施)CPAP(実施、未実施)ASV(実施、未実施)人工透析(実施、未実施)CHDF(持続血液透析濾過法) (実施、未実施)弁膜手術(実施、未実施)大動脈バルーンパンピング(実施、未実施)経皮的心肺補助(PCPS)(実施、未実施)左心室補助人工心臓(LVAD):(実施、未実施)
  • 退院前および退院後薬物治療:
    ACE阻害薬(なし、あり、薬剤名、1日量)ARB(なし、あり、薬剤名、1日量)β遮断薬(なし、あり、薬剤名、1日量)ミネラルコルチコイド拮抗薬(なし、あり、薬剤名、1日量)利尿薬(なし、あり、薬剤名、1日量)ジギタリス(なし、あり)Ca拮抗薬(なし、あり)硝酸薬(なし、あり)抗不整脈薬(アミオダロン以外)(なし、あり)アミオダロン(なし、あり)ワルファリン(なし、あり)NOAC(なし、あり)抗血小板剤(なし、あり)脂質低下薬(なし、あり)糖尿病治療薬(なし、あり)、薬物療法等の医療内容、医療費

タイムスケジュール

参加意志の確認締め切り 
倫理委員会準備期間 
登録期間各施設での倫理委員会承認日 〜 2021年4月30日
(5,000症例収集された場合は早期に終了する)
予後調査登録後1年および2年の時点での予後調査